売上債権回転期間とは？計算方法や長期化の弊害・改善方法を紹介！

売上債権回転期間とは、一言で言うと、売上金額に対して売上債権がどれくらいの割合を占めているかを示す指標です。つまり、売上発生から代金回収までにかかる期間（＝回収期間）を「月数」などの単位で可視化できるため、企業の資金繰りにおける重要な目安となります。

たとえば、売上債権回転期間が長いということは、商品やサービスを提供したあとに実際の支払が完了するまでの期間が長いことを意味し、その間は資金が会社に入ってこない状態が続くということです。これはすなわち、売上が順調に立っているように見えても、会社に現金が不足している要因となり得ます。

逆に、回転期間が短い企業は、売上から迅速に現金を回収できているため、資金繰りが安定しているケースが多くなります。

また、売上債権回転期間とあわせて見ておきたいのが買入債務回転期間です。こちらは、仕入れ先への買入に対して自社が支払うまでの期間を示しており、両者のバランスが取れていない場合、たとえば「売上債権の回収は2か月後、買入代金の支払は翌月」などとなっていると、資金繰りは慢性的に悪化します。

「売上が上がっているはずなのに、会社に資金が無く経営が苦しい。」

もし今あなたの会社がそんな状況にあるのであれば、本記事を通じて売上債権回転期間の見直しや、買入と支払のタイミングの調整を行うことで、資金繰りを大幅に改善するヒントが得られるはずです。まずは現状を正確に把握し、改善の第一歩を踏み出してみましょう。

売上債権回転期間とは？

まず初めに、売上債権回転期間とはそもそも何なのかという部分や、計算方法、業種ごとの目安について解説していきます。

売上債権回転期間とは何かを解説！

売上債権回転期間とは、売上債権の回収に掛かった時間のことを指しています。
この数値が低いほど売掛債権を頻繁に回収できており、資金繰りが良いことを表します。
一方、売上債権回転期間が長い場合、売上が発生しているにもかかわらず、資金が入って来ない状態が長く続いていることになります。
経営に悪影響が出る可能性が高いため、実感がある場合は改善が必要と言えるでしょう。

売上債権回転期間の計算方法や業種ごとの目安を紹介

売掛債権回転期間を計算することで、債権回収までにかかっている平均的な日数を可視化できます。
そして、求めた数値を業種平均と比較することで、債権回収スピードにおける課題の有無を、把握できるようになるのです。
そのため、ここでは売上債権回転期間の計算式や、業種ごとの目安を紹介します。

売上回転期間の計算式・計算方法

売上債権回転率は、以下の計算式で求めることができます。

・売上債権回転期間＝売上債権/売上高

この計算を行うことで、年単位での売掛債権回転期間を求めることが可能です。
しかし実際に資金繰りの改善に使用する場合には、上記の式を1年の日数で割った値が、よく用いられます。

売上債権回転日数　＝　売上債権　÷　（売上高　÷　365日）

この計算式の結果により、債権回収にかかる日数を求めることが可能です。
例えば、計算の結果、売上債権回転日数が4と出たのであれば、売掛金を回収するのに平均で4日かかっていることになります。

売上債権回転期間の業種ごとの平均は？

売上債権回転期間（日数）の、業種ごとの売掛債権回転率の平均は以下のようになります。

全業種—63日
水産・農林業—60.7日
卸売業—64.8日
運輸業・郵便業—43日
小売業—20.3日
不動産業・物品賃貸業—4.2日
宿泊業、飲食サービス業—3.0日
その他サービス業—32.5日
※参考　https://advisors-freee.jp/article/category/cat-big-09/12577/

このように、売上債権回転期間には業種ごとに差があります。
水産業や卸売業では、売掛債権の回収期間は60日以上と、非常に長い数字になっています。
一方、不動産業は4.2日、宿泊業は3.0日と、売掛債権回転日数が短いです。

このように、業種ごとに平均日数には大きな開きがありますので、ご自身の事業を計算し比較してみて、日数に開きが無いか確認してみましょう。
平均と比べて回収期間が長いようであれば、改善の余地があると言えます。
また、平均値よりも早く資金の回収ができていたとしても、資金繰りの苦しさを実感しているなら、対策を取るべきでしょう。

売上債権回転期間の長期化による弊害

売上債権回転期間が長くなってくると、経営に問題が生じてくることになります。
手元に資金が無い状態が続くことにより、資金繰りが悪化し経営が苦しくなるのです。

資金繰りの悪化が発生する

売上債権回転期間が長期化すると、売上は上がっているにもかかわらず、会社には資金が無いという状況に陥ります。
その一方で、社員への給与支払いや家賃、光熱費、ローンの返済などの、様々な支払いの期日は容赦なく訪れます。
そのため、資金繰りが悪化し、経営が苦しくなってしまいます。
お金は経営を行う上での血液に例えられることもあり、流れが止まると倒産の原因になることが珍しくありません。
実際に、売掛金の回収周期の悪化が原因で黒字倒産に陥るケースもあるため、深刻な状況であると言えるでしょう。

融資が必要になる可能性がある

資金が必要な際に手元に現金が無ければ、銀行やノンバンクからの借り入れが必要になることもあります。
融資を有効活用すれば、売掛金を回収できるまでの期間を乗り切り、目の前の支払いを乗り切れるでしょう。
しかし、融資を受けるには当然金利や手数料が発生するため、本来は必要なかったはずの負担をすることになります。
また、状況によっては追加融資を受けられないこともあり、確実に資金繰りを解決する手段とは言い切れない面もあります。

売上債権回転期間を改善するには？

売上債権回転期間が長期化すると、売上が発生しているにもかかわらず、手元に資金が入ってこない期間が長期化します。
売上金の回収時間が長い状態が常態化してしまうと、出費が入金額を大きく超える事態になり、黒字倒産に追い込まれかねません。
そうなる前に、以下で紹介する対策を行い、売上金の回収速度を早めるようにしましょう。

未回収債権が無いかを確認する

まず、債権の回収がきちんとなされているかを確認しましょう。特に急激に取引先が増えた場合には、未回収の債権が増えてしまいがちです。
そのため、売掛先の支払いスケジュールを見直し、支払いの遅延や未払いの有無を確認することをおすすめします。
もしも、未払い債権が確認できた場合には、すぐに手を打つ必要があります。
取引を一時的に停止するなどして、傷口を広げないようにしましょう。
取引先が倒産しそうな気配が漂っている場合には、早急に訴訟を提起したほうがいい可能性もあります。

仕入債務回転期間を延ばせないか話し合う

仕入債務回転期間とは、自社が取引先に対し持つ債務を支払うまでの期間のこと。
仕入債務回転期間を延ばせれば、売掛金の回収後に各種支払いを行うことが可能になり、資金繰りが改善します。
そのため、仕入債務回転期間の引き延ばしについて取引先と話し合うことは、資金繰りを改善する有効な手段と言えるのです。
ただ、当然ながら取引先の企業も資金繰りの悪化を避けるため、早期に売掛金の回収をしたいと考えているもの。
仕入債務回転期間の引き延ばしを提案した際には、難色を示す可能性もあります。
そのため、買掛先との信頼を損なう可能性が高いようであれば、無理な交渉は避けた方が無難であると言えるでしょう。

ファクタリングを有効活用する

売上債権回転期間を短くするには、ファクタリングを利用するのも有効な手段です。ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権を支払い期日前にファクタリング会社へ売却し、早期に資金化することができる金融サービスです。とくに中小企業にとっては、運転資金の確保や資金繰りの安定を図るうえで、極めて重要な制度の一つとして注目されています。

売上債権の滞留が長期化すれば、資金の流動性が失われ、健全なキャッシュフローを維持するのが難しくなります。このような状況では、いくら損益計算書上の利益が出ていても、実際には手元資金が不足し、黒字倒産という最悪のケースに至ることもあります。ファクタリングを導入することで、債権の早期現金化が可能となり、与信リスクの回避や回転率の向上にもつながります。

ファクタリングには一定の手数料が発生しますが、それ以上に売掛金を最短即日回収できるため、現金がすぐに必要な場合には非常に重宝するでしょう。導入によって得られる効果は単なる資金調達にとどまらず、会計処理や仕訳の効率化にも役立ちます。また、債権の回収不能リスクを事前に回避するという点で、企業全体の安全性を高めることにも貢献します。

ファクタリングは、一般的には「2社間」「3社間」の2つの型があり、それぞれの仕組みや影響範囲は異なります。電子請求書との連携やエクセルでの残高管理ツールとの連動も進んでおり、最新のツールやクラウド会計と連携させることで、より効率的な資金管理が可能です。導入事例としては、製造、小売、卸売、サービス業など多種多様な業種別の中小企業での活用が進んでおり、個人事業主にも広がりを見せています。

また、ファクタリングの利用にあたっては、貸借対照表や決算書の内容を理解し、自社の信用状況や与信枠、棚卸資産との関係性などを把握する知識も求められます。法的な観点でも、債権譲渡の登録、契約書の発行・受領、マイナンバーとの照合など、遵守すべき手続きが含まれており、税理士など専門家のサポートがあるとより安心です。

特に、経費や人件費、カード払いの支払い予定と売掛金の入金タイミングが一致しないような「資金ギャップ」が生じやすい時点や期末などの繁忙期には、ファクタリングの導入は資金管理上大きな効果を発揮します。過去のデータやダウンロード可能なレポートを活用し、回転率を分析することにより、より的確なタイミングでの資金調達が可能になります。

以上のように、ファクタリングは単なる「現金化の手段」ではなく、健全なビジネスの維持・成長において重要な役割を果たします。今後の方針や資金計画を見直す中で、定期的なセミナーやイベントへの参加、関連制度の理解も深めながら、自社の経営戦略に合わせたファクタリングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。導入の検討に際しては、業界内のランキングや口コミ、導入事例などを参考にすることも効果的です。

売上債権回転期間とは？のまとめ

今回は「売上債権回転期間」について詳しく解説させていただきました。売上債権回転期間とは、売上金額に対して売上債権がどの程度残っているかという割合、すなわち、売上を上げてからその代金が実際に回収されるまでにかかる期間を表す指標です。この期間を算出することで、資金の流れを可視化でき、企業の資金繰りの状態や問題点を客観的に把握することが可能になります。特にこの回収期間が長くなると、帳簿上では売上が好調に見えていても、実際には現金が手元に入ってくるまで時間がかかり、資金が不足するという事態を招きかねません。そのため、売上債権回転期間を把握し、必要に応じて短縮する取り組みは、企業の経営を安定させるうえで非常に重要です。

売上債権回転期間が長期化する原因はさまざまですが、取引先の支払条件が長い、請求や回収のタイミングにムラがある、経理業務の遅れなどが挙げられます。こうした要因により資金繰りが厳しくなっている場合、今後の経営計画や業務効率に支障が出てくる可能性も否定できません。そのようなときに注目したいのが、売掛債権を早期に現金化できる「ファクタリング」という資金調達手段です。売上が立っているにも関わらず資金が不足している、金融機関からの融資が受けられない、あるいは返済リスクを避けたいといったケースでは、ファクタリングの活用により即座に現金化が可能となるため、売上債権回転期間の短縮にも直結します。

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